大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)1944号 判決 1949年12月21日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人両名弁護人伊藤修佐の上告趣意第一点について。

所論の昭和二三年一〇月五日の原審第三回公判期日には被告人千葉隆の弁護人正木亮、同中村次郎は出頭したが、同高野純二郎は不出頭のまゝ開廷して審理が行われ、弁護人正木亮、同中村次郎は右被告人の為に弁論した後、裁判長は右被告人に対して、高野弁護人の弁論を望むや否やを尋ねたところ、右被告人は同弁護人の弁論を抛棄する旨を答えたので、裁判長は更に被告人等に最後に弁解することなきやをたしかめて、弁論を終結したことは記録上明らかである。

しかし、弁護人高野純二郎は同年八月五日の第二回公判期日の召喚を適法に受け、正木、中村、椎津の各弁護人と連名にてその期日請書を提出しながら、同期に出頭しないものであること、並びに同期日において裁判長より次回第三回公判期日を來る一〇月五日と指定告知されていることも記録上明らかである。從って原審第三回公判期日には、高野弁護人は出頭べき筋合であつて、同弁護人が何等正当の事由を告げることなくして同期日に出頭しなかったことは、むしろ同弁護人の職責を盡さないものと見るべきである。されば、被告人が同期日の公判廷において、かゝる弁護人の弁論を抛棄した以上、原審には何等弁護権の行使を不法に制限した違法はない。

同第二点について。

しかし、原判決の挙示する証拠によれば、被告人等は原判示のように拳銃で強盗しようと相談して、被告人千葉隆は玄関先で見張をし、他の被告人三名は屋内で強盗の実行をした事実を肯認できる。されば原判決が被告人千葉隆に対して刑法二三六條一項六〇條を適用したのは正当であって、原判決には所論のような擬律錯誤の違法はない。

所論は結局事実誤認の主張に過ぎないから、上告適法の理由とならない。

同第三点について。

しかし、原判決は本件強盗罪の被害者である所有者穴沢六郎提出の強盗被害届及び強盗被害追加届を証拠として引用したもので、所論穴沢一夫の供述を録取した書類又はこれに代わるべき書類を証拠としてはいないのである。そして右穴沢六郎については原審において被告人又は弁護人より公判期日における尋問の請求をしなかったのであるから、原判決には所論刑訴應急措置法に反するところはない。所論は原審の裁量に属する証拠の取捨判断又は審理の限度を非難するに帰するから採ることができない。

よって旧刑事訴訟法第四四六條により、主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例